松江地方裁判所 昭和34年(わ)14号 判決 1959年6月02日
被告人 岡田博
昭二・九・九生 貸金業
岡田宏之
大一四・二・二七生 金融業手伝
渡部保雄
明三九・三・一四生 精肉店相談役
金築重久
大元・一一・八生 無職
主文
被告人岡田博を懲役二年六月及び罰金一、〇〇〇円に、
被告人岡田宏之及び同渡部保雄をいずれも懲役二年六月に、
被告人金築重久を懲役一〇月に、
各処する。
被告人岡田博に対する右罰金を完納することができないときは、金二〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。
被告人金築重久に対し、本裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。
押収にかかる、金封二枚(証第九及び第一一号)は、いずれも被告人渡部保雄から、金封一枚(証第一二号)、猟銃一挺(証第一三号)及び日本刀一振(証第一四号)は、いずれも被告人岡田博からそれぞれ没収する。
訴訟費用たる証人飯塚音吉、同杉原佶三及び同大谷昌行に支給せる分は、全部被告人岡田博、同岡田宏之及び同渡部保雄三名の連帯負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人岡田博は、昭和二〇年八月中終戦直後復員し、一時日立金属株式会社安来工場で働き、昭和二二年六月中島根県巡査となり、当初、松江警察署、次で、木次警察署、江津警察署に勤務したが、昭和二四年一二月中懲戒免職となり、その後、行商、桐材ブローカー等をしていたもの、被告人岡田宏之は、昭和二〇年一月中、満洲で応召し同年八月中終戦となるや直ちにソ連軍に抑留され、昭和二二年一月中帰還し、その後、約一年間日本共産党出雲地区委員会に事務員として勤務したが、昭和二五年一〇月頃から、肩書住居地で書籍の販売業を始めたもの、被告人渡部保雄は、元肩書本籍地において、家業たる石材業に従事していたが、終戦後は肩書住居地で食品鑵詰の製造、販売業等に手をつけ始め、その後、精肉店等にも関係するようになつたもの、又、被告人金築重久は、昭和一一年六月中島根県巡査となり、当初、三成警察署に勤務したが、程なく応召し、昭和二〇年終戦直後復員し、一且、木次警察署に配置されたが、昭和二一年三月頃、軍隊当時の憲兵の経歴により公職追放となり、その後木次町日本鉄線株式会社で働き、昭和二七年以後は定職なく、日雇労働等で生計を維持していたものであるところ、かねてから出雲市今市町三京町には、本社を大阪市東区十二軒町ミスミビル内に有する日本興信所の山陰総局なる事務所が設けられ、他人の依頼に基く資産、信用調査、結婚関係調査等を営業内容として、被告人岡田博も一時同所で働いていたことがあるが、昭和二九年六月頃、右山陰総局が営業不振のため閉鎖されるや、被告人岡田博は、それ以来右日本興信所とは全く何等の関係もないのに拘らず、相被告人岡田宏之、同渡部保雄、同金築重久等と相謀り、擅に、出雲市内で「日本興信所山陰総局」なる看板を掲げ、恰も右日本興信所の出先機関なるかの如く装つて事務所を構え、一応、会員組織により信用調査業務を行うとの形態となし、ここにおいて、被告人等は、右事務所を本拠として、互に相協力し、或いは、各自単独で、専ら法律知識の乏しい一般大衆を対象となし、主としていわゆる焦げつき債権や他人間の紛争を捜し求め、関係者からの委任という形式の下に、他人間の山林境界、家屋明渡、債権取立その他一切の紛争事件に介入した上、債権の取立等を強行することを業とし、その際、関係者の弱味と法的無知につけこみ、些細なことに因縁をつけて多額の金品を喝取することを常習とし、更に、執行吏と結託して、債権者代理人、競売参加人等の名目で、差押、競売等の現場に臨み、極めて廉価で競売物件を入手した上、債務者に対し、これが買戻方強要し、手数料、損害金、旅費、日当等各種名目で莫大な金額を加算して、競落価格に数倍する金額の提供方求める等、法の執行に藉口し、実際は法秩序を無視せるかかる不法の手段、方法によつて取得した不正の利益に依存して渡世するに至つたものであるところ、
第一、被告人岡田博は
一、弁護士でないのに拘らず、報酬を得る目的を以て、
(一) 池田正隆及び飯塚昇と共謀の上、昭和三〇年秋頃、松江市北田町一三五の六番地大阪永柳コルク工業所島根県連絡事務所長恩田亮一方において、同人より同人の仁多郡仁多町大字八代居住の松浦鉄郎に対する前渡金返還等の債権金三万一、〇〇〇円の取立方依頼を受けるや、翌三一年二月頃、右松浦をしてそのうち金二万九、〇〇〇円の支払誓約書を作成せしめた外、公正証書作成の手続をなさしめた上、執行文の附与を受け、同年四月頃、松江地方裁判所今市支部執行吏売豆紀武雄に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押、競売の手続に立会い、且、これが弁済金を受領し、
(二) 右池田正隆及び飯塚昇と共謀の上、昭和三一年五月頃、仁多郡斐上町大字横田六八四番地自転車修理販売業石原浅治方において、同人より同人の同郡斐上町大字大呂居住の農業高橋徳男に対するオートバイ売却代金等の債権金一二万円の取立方依頼を受けるや、その頃、右高橋をして金一三万二千円の支払誓約書を作成せしめた外、公正証書作成の手続をなさしめた上、執行文の附与を受け、同年七月頃、前記売豆紀執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて強制執行を委任すると共に、差押の手続に立会い、
(三) 同年一二月頃、出雲市古志町農機具商春日盈方において、同人より同人の大田市大田町居住の吾郷信蔵に対する農機具売掛代金等の債権金七万四、五〇〇円の取立方依頼を受けるや、その頃、右春日より債権、債務関係を証明する約束手形二通を受取ると共に、双方から公正証書作成の手続上必要な委任状を徴し、次で松江市なる野尻公証人役場において、自ら債権者代理人となつて金銭消費貸借契約の公正証書作成の手続を為した上、執行文の附与を受け、翌三二年三月頃、前記売豆紀執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて右吾郷所有の有体動産の強制執行を委任すると共に、差押、競売の手続に立会い、
(四) 前記池田正隆と共謀の上、昭和三二年五月頃、松江市朝日町四八七番地東芝商事株式会社松江営業所において、同営業所事務員秦進也より同会社の浜田市紺屋町岡本電業株式会社(代表取締役岡本定枝)に対する商品売掛金等の債権金一八一万七、七三三円の取立方依頼を受けるや、同年六月頃、前記売豆紀執行吏に強制執行に必要な書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押、競売の手続に立会い、
以て、その都度法律事務の取扱を為し、
二、昭和三一年夏頃、出雲市今市町なる当時の自宅において、有限会社来待物産代表取締役伊藤敏朗より同会社の大原郡加茂町居住の窯業兼農業の舟木体十郎に対する瓦の売掛代金等の債権金二万一、九六四円を代金一万二、〇〇〇円で譲受けるや、その頃右舟木より被告人自身に対する債務支払誓約書、公正証書作成の手続上必要な委任状及び印鑑証明書を徴し、次で、同年八月二五日、前記野尻公証人役場において、自ら債権者代理人となつて金銭消費貸借契約の公正証書作成の手続をなした上、執行文の附与を受け、同年一二月頃、松江地方裁判所今市支部執行吏役場に右舟木所有の有体動産の強制執行を委任すると共に、差押、競売の手続に立会い、以て、他人の権利を譲り受けて、訴訟の手段により、その権利の実行をすることを業とし、
三、昭和三三年三月二九日頃、出雲市今市町東町金坂マスヨ経営に係る小料理店「ライカ」において、右マスヨの夫たる金坂吉美に対し、同人が松江市中原町居住の酒の素卸販売業石橋義雄に対する債務を支払わないことで因縁をつけ、口論の末、右金坂吉美の肩を強く掴む等の暴行を加え、
四、同年五月二一日頃、出雲市今市町錦町料亭「白扇」において、同市今市町居住の靴製造職人岩田栄に対し、債権取立のことで因縁をつけ、口論の末、手拳を以て同人の顔面等を数回殴打する等の暴行を加え、因つて同人に対し、全治約一週間を要する右眼打撲傷を与え、
五、平田市東郷町居住の農業西尾定蔵と共謀の上、同年七月一八日頃、同市平田町農機具商浜村安友方において、執行吏代理北川大造に対し、同人が債権者西尾定蔵、債務者小林久吉間の有体動産差押事件につき、これが執行のため現場に赴いたことに対する謝礼及び将来これが債権取立に関し有利な取扱を受けるべく、その報酬として現金一、〇〇〇円を交付し、以て右北川の職務に関し賄賂を供与し、
六、同年九月一二日頃、債権者島根新菱自動車株式会社、債務者三浦泰郎間及び債権者三福製菓株式会社、債務者池野広信間の各有体動産差押事件につき、前記北川執行吏代理が競売のため現場に赴いた際、相被告人岡田宏之及び同金築重久と共に該手続に参加して競落人となつたが、これに対する謝礼及び将来も委任事件の執行、競売参加等に関し、有利な取扱を受けるべくその報酬として、
(一) 同日益田市国鉄石見益田駅において、右北川に対し、国鉄石見益田駅より国鉄松江駅までの三等乗車券一枚時価三九〇円相当のものを交付し、
(二) 同日浜田市琵琶町津田屋旅館こと小川小夜子方に右北川とともに投宿し、宿泊飲食費等約一、〇〇〇円相当の饗応を為し、
以て、その都度右北川の職務に関して賄賂を供与し、
七、昭和三〇年一一月二九日、島根県公安委員会より猟銃一挺の所持許可証を受けていたところ、同三三年春頃飯石郡三刀屋町より出雲市姫原町に住居を移転したのに拘らず、その旨島根県公安委員会に届出て許可証の書替を受けず、
八、昭和三一年一二月一六日頃、出雲市大津町飯塚銀一方において、無登録の刃渡り約三七糎の日本刀一振を買受けたが、法定の除外事由がないのに拘らず、島根県公安委員会の許可を受けない儘、同三三年春頃より同年一一月一二日頃迄、出雲市姫原町なる当時の自宅においてこれを所持し、
第二、被告人岡田宏之は
一、昭和三二年一一月二六日頃、大原郡木次町農業兼家畜商佐藤恒吉方において、同人に対し、債権取立のことで因縁をつけ、口論の末、その場にあつた鉄瓶を以て同人の頭部を二回殴打し、因つて同人に対し、全治一週間を要する右側頭部及び後頭部打撲傷を与え、
二、弁護士でないのに拘らず、報酬を得る目的を以て
(一) 昭和三三年九月頃、簸川郡斐川村大字荘原町製材業岡田治義において、同人の大原郡木次町大字日登居住の浜村進に対する自動車修理代金等の債権金二万二、八一〇円の取立方依頼を受けるや、その頃、木次簡易裁判所に対して支払命令申立の手続を為し、
(二) 同年七月頃、出雲市今市町飲食店営業長岡輝より、同人の平田市国富町自動車修繕業原貞雄に対する飲食代金等の債権金五、五六〇円の取立方依頼を受けるや、同年一〇月頃、出雲簡易裁判所に対し、支払命令申立の手続を為し、
(三) 同年七月二〇日頃、出雲市今市町なる肩書居宅において、大原郡木次町居住の木材商藤井七造より同人の八束郡美保関町有限会社森山造船所代表取締役松本安兵衛外一名に対する約束手形金等の債権合計金二六万円の取立方依頼を受けるや、その頃、右藤井から債権の存在を証明する約束手形二通、明細書一通等を受取り、同年一一月頃、松江簡易裁判所及び木次簡易裁判所に対し、それぞれ支払命令申立の手続を為し、
以て、その都度法律事務の取扱を為し、
第三、被告人渡辺保雄は、弁護士でないのに拘らず、報酬を得る目的を以て、昭和三三年二月頃、松江市津田町居住の印刷業山田武美より、同市西津田町富永商事有限会社代表取締役永徳昇次郎の同市大正町有限会社福間商店代表取締役福間理則に対する約束手形金等の債権金一万一、八〇〇円の取立方依頼を受けるや、その頃、右山田から執行力ある公正証書原本及び委任状を受取り、同月二六日頃、松江地方裁判所執行吏北川雅夫に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に差押の手続に立会い、以て法律事務の取扱を為し、
第四、被告人金築重久は、弁護士でないのに拘らず、報酬を得る目的を以て、
一、昭和三三年三月頃、出雲市今市町会社員(元孵卵業)の園山勝嘉方において、同人より、同人の飯石郡三刀屋町居住の日雇人夫荒木文次郎に対する雛の売却代金等の債権金四万五、九七〇円の取立方依頼を受けるや、同月一七日頃、木次簡易裁判所に対し、支払命令申立の手続を為し、執行文の附与を受けた上、その頃前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押、競売の手続に立会い、
二、同年四月頃、出雲市内において、平田市平田町居住の飲食店従業員大井綾子より同人の八束郡宍道町居住のクリーニング業大成清美に対する貸付金等の債権金一万一、五〇〇円の取立方依頼を受けるや、その頃、松江簡易裁判所に対し、支払命令申立の手続を為し、同年六月二六日頃、執行文の附与を受け、前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任し、
三、同年七月頃、出雲市今市町なる前記長岡輝方において、同人より同人の簸川郡佐田村大字宮内居住の農業永井敬一に対する飲食代金等の債権金四、七一〇円の取立方依頼を受けるや、同年一〇月頃、出雲簡易裁判所に対し、支払命令申立の手続を為した外、債務者たる右永井に対し、支払方督促を為し、
以て、その都度法律事務の取扱を為し、
第五、被告人岡田博、同岡田宏之及び同渡部保雄は、共謀の上、
一、昭和三二年一〇月二五日頃、被告人渡部保雄が出雲市今市町国鉄出雲市駅前において、一畑電気鉄道株式会社乗合自動車のバックミラーに触れ、右耳後部及び後頭部に軽微な擦過傷を受けたのを奇貨とし、同会社より慰藉料という名目で金員を喝取せんことを企て、右負傷は殆んど治療を要しないものであるのに拘らず、誇大に身体障碍を訴えて同市内の島根県立中央病院に入院し、翌二六日頃、同病院において、右会社出雲営業所長田辺健、事務係長飯塚音吉に対し、「神経がやられておるから手が何本にも見える。中央病院のボロ医者では治らんから寝台車で東京迄運んでくれ。一畑は出雲市の玄関でバスを発着させて危険でしようがない。今後は市民運動を起して一畑自動車を締め出して運転ができないようにしてやる。わしは一〇〇万や二〇〇万の安い体ではない」「共同で三人が事業をやつているのにこの事故で大きな損害を受けたがどうして呉れるのか」「社長を見舞によこせ。一畑の天野や杉原は友人であるのに何故見舞に来ないか」等と大声で怒嗚り、更に同月二九日頃、同市今市町なる被告人岡田博の当時の居宅において、右会社の車輛係長天野稔、燃料係長杉原佶三に対し、「金で解決する方法もあるが、出せないなら事故現場に謝罪の張紙を出して山本社長に手をついてお詑びをさせえ」等と申向けて暗に金員を要求すると共に若しこれに応じないときは同会社の営業を妨害すべくその都度告知して同人等を畏怖せしめ、因つて、翌一一月一日頃、同市東町料亭「錦水」こと桑原幸子方において、前記飯塚を通じ、右会社より、慰藉料名下に現金五万円の交付を受け、以てこれを喝取し、
二、同年一二月三日午前一〇時頃、松江市国屋町七七六番地一畑電気鉄道株式会社において、同会社専務取締役柴田午郎、自動車部長中山秀夫、庶務課長長船政彦等に対し「一畑は定員を超えてバスに人を乗せておるがどうした訳か。国法を犯した場合は警察が取締らねばならんが、現行犯なら誰でも逮捕できるから吾々の手で実力で引ずり下す」等と申向けて暗に金員を要求すると共に、若しこれに応じないときは同会社の営業を妨害すべき気勢を示して同人等を畏怖せしめ、因つて即日松江市魚町料亭「魚一」こと吉村あき子方において、松江市中原町居住の前記石橋義雄を介して右会社より現金三万円の交付を受け、以てこれを喝取し、
三、同年一〇月、飯石郡掛合町大字松笠居住の農業片石重保より同人の簸川郡佐田村大字原田居住の農業森立市左衛門に対する債権の取立方を依頼されたのを奇貨として、右森立より金員を喝取せんことを企て、同月三一日頃、右森立方において、同人及び同人の長男昌明の両名に対し「わしらは人の金取りや差押をして何時も警察や裁判所に出入している」「不服なら裁判にかけても良い。そうすれば費用を合せて一〇〇万円位かかるがそれでも承知か」「裁判にかけても通らんから金を出すか手形を書くかせい。それが出来ないとすぐ差押をする」等と語勢鋭く申向けた後、「わしらに一人当り一万円ずつ出せ。そうしたら一五万円に負けてやる」と金員を要求すると共に、若しこれに応じないときは、同人等の身体、財産に対して危害を加えるかも知れない気勢を示して同人等を畏怖せしめ、因つて即時同所において現金二万円及び額面一万円の小切手一枚の交付を受け、以てこれを喝取し、
四、昭和三三年一月二一日頃、仁多町大字亀嵩町一、五五〇番地農機具販売業小林章夫こと甲斐章夫方において、前記執行吏代理北川大造が競売した右甲斐所有のオートバイ一台外二五点を金五万一、五〇〇円で競落したのを奇貨とし、右甲斐等より金員を喝取せんことを企て、同年三月二四日頃、右甲斐方において、同人同び同人の父甲斐理造をして右競落品を金七万八、〇〇〇円で買取らせた上、「今日わし等が来た費用二万円を出せ。金が無いなら手形を書け。さもないと品物を持つて帰る」等と申向けて金員を要求すると共に、若しこれに応じないときは同人等の身体、財産に対して危害を加えるかも知れない気勢を示して同人等を畏怖せしめ、因つて、即時同所において右理造より同人振出に係る額面金二万円の約束手形一通の交付を受け、次で、右約束手形が不渡となるや、同年四月頃、前記甲斐章夫方に赴き、同人が既に競売物件の買戻を為してこれが所有権を回復しているのに拘らず、同人に対し「おれの品物を何処に隠した。今日はどうでも品物を持つて帰る。若し品物がないのなら金を出せ」と申向けた上、同町内村上旅館に右甲斐章夫、同理造両名を連れ込み、右両名に対し「手形の二万円と今日来た損害金二万円をすぐ出せ。出さねばどうしてでも財産をとつて裸にしてやる」等と語気荒く申向けると共に、若しこれに応じないときは同人等の身体、財産に対して危害を加えるかも知れない気勢を示して同人等を畏怖せしめ、因つて右理造より即日同所において現金二万円、更に、同年四月二九日頃、出雲市今市町なる被告人岡田博の当時の居宅において、現金二万円の交付を受け、以てこれを喝取し、
五、三名共同して、
(一) 同年二月二四日頃、能義郡広瀬町八一二番一地農業西田喜好方家屋明渡現場の多衆の面前において、弁護士馬淵分也に対し、「馬淵表に出ろ。叩き殺してやる」「お前は日本の法律を知らん。朝鮮弁護士だ。月謝を持つて来い。教えてやる」等と大声で怒嗚りつけ、以て同人の身体に対して危害を加えることを告知すると共に、公然事実を摘示して同人の名誉を毀損し、
(二) 同年三月二五日頃、松江市母衣町松江地方裁判所構内島根弁護士会控室、次で、その附近において、前記馬淵弁護士に対し、「馬淵の分也。分也の朝鮮弁護士。何故本日わしらを呼び出したか。外へ出ろ。打ち殺してやる」等と怒嗚りつけ、以て同人の身体に対して危害を加えることを告知すると共に、公然事実を摘示して同人の名誉を毀損し、
(三) 同年五月一日頃、出雲市今市町東町なる前記小料理店「ライカ」において前記金坂吉美に対し、「支払命令に対して異議の申立をしているが、それなら徹底的にやつてやる。払う意思があるのかないのか。金を出せ」「大なまけ者が。よし、お前がその気なら、これから毎晩お客の居る処に来てやる」等と大声で怒嗚りつけ、以て同人の身体、財産に対して危害を加えることを告知してこれを脅迫し、
六、いずれも弁護士でないのに拘らず、報酬を得る目的を以て、
(一) 昭和三一年一〇月頃、仁多郡仁多町大字高田農業石原登方において、同人より同人の前記甲斐章夫に対する貸付金等の債権金一七万円の取立方依頼を受けるや、同三二年八月頃、恰も右石原より該債権を譲受けたかの如く装い、右甲斐との間に支払契約書を作成し、同年一〇月頃、公正証書作成の手続をなした上、同年一一月頃、執行文の附与を受け、その頃、前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押、競売の手続に立会い、
(二) 昭和三二年一〇月頃、出雲市今市町なる被告人岡田博の当時の居宅において、松江市東本町中西物産株式会社営業部長加藤誠二郎より、株式会社中西熊三郎商店の同市和多見町居住の酒類販売業滝川新次郎に対する酒類売掛代金等の債権金一二万二、九二〇円の取立方依頼を受けるや、右加藤より執行力ある支払命令書正本を預り、その頃、前記売豆紀執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて、有体動産の強制執行を委任すると共に、差押の手続に立会い、
(三) 同年一二月初頃、出雲市塩冶町なる島根県農事試験場において、同試験場病虫科長水戸野武夫より同人の出雲市大津町居住の衣類行商松井輝子に対する風呂桶売却代金等の債権金六、〇〇〇円の取立方依頼を受けるや、その頃、恰も右水戸野より該債権を譲受けたかの如く装い、関係書類を作成した上、出雲簡易裁判所に対し支払命令申立の手続を為し、執行文の附与を受けた上、その頃、前記売豆紀執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、その執行に立会い、且、これが弁済金を受領し、
(四) 同年七月頃、出雲市内において、大原郡大東町大字大東居住の森崎清子より同人の簸川郡大社町居住の熔接工加藤薫に対する貸付金等の債権金二万円の取立方依頼を受けるや、右森崎より右債権を証明する約束手形及び印鑑を借受け、その頃、恰も同人より該債権を譲受けたかの如く装い、関係書類を添えて出雲簡易裁判所に対し支払命令申立の手続を為し、執行文の附与を受けた上、翌三三年一月九日頃、前記売豆紀執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押の手続に立会い、次で、債務者たる右加藤と和解を為し、
(五) 昭和二九年秋頃、出雲市中央通り所在の「日本興信所山陰総局」と自称する事務所において、前記恩田亮一より、同人の松江市北堀町居住の搾油商三島恭に対する木炭売掛代金等の債権金七、一六七円の取立方依頼を受けるや、昭和三三年一月一〇日頃、松江簡易裁判所に対し、支払命令申立の手続を為し仮執行の宣言を得た上、同年二月四日頃、前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて、有体動産の強制執行を委任すると共に、その執行に立会い、
(六) 昭和三三年一月頃、出雲市内において、同市大津町居住の中村芳雄より、同人の同市同町居住の製菓業猪井恒三郎に対する水飴売掛代金等の債権金四万四、八五〇円の取立方依頼を受けるや、右中村より執行力ある和解調書正本、債権者代理人としての委任状等関係書類を受取り、同年二月一二日頃、前記売豆紀執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、その執行に立会い、且、債務者たる右猪井と弁済の方法につき協議を為し、
(七) 同年一月頃、出雲市今市町なる被告人岡田博の当時の居宅において、同市大津町居住の衣類商城代精より同人の同市同町居住の紙箱製造業飯塚銀一外一名に対する貸付金等の債権金二万六、〇〇〇円の取立方依頼を受けるや、右城代より取立に必要な一切の証憑書類及び印鑑を受取り、その頃出雲簡易裁判所に対して支払命令申立の手続を為し、執行文の附与を受けた上、同年二月頃、前記売豆紀執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押、競売の手続に立会い、
(八) 同年二月一〇日頃、能義郡広瀬町水谷旅館において、同郡同町居住の運送業里水善次郎より、同人が競落せる同郡同町居住の前記西田喜好占有家屋明渡の執行方依頼を受けるや、委任状を徴して同年二月二四日頃、前記北川執行吏に執行力ある不動産引渡命令の外、強制執行に必要な関係書類を添えて、右家屋明渡の強制執行を委任すると共に、その執行に立会い、
(九) 同年二月頃、出雲市今市町なる被告人岡田安之の肩書居宅において、前記中村芳雄より同人の大原郡木次町居住の菓子製造、販売業石田清に対する菓子原料売掛代金等の債権金二万四、二三五円の取立方依頼を受けるや、取立に必要な一切の証憑書類を受取り、その頃、木次簡易裁判所に対し支払命令申立の手続を為し、次で、翌三月頃、前記売豆紀執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押の手続に立会い、
(十) 同年四月頃、大原郡木次町において、同郡同町居住の自転車修理販売業藤原昌治より同人の同郡同町居住の前記石田清に対する貸付金等の債権金一万三、五〇〇円の取立方依頼を受けるや、その頃、該債権に関し執行力ある公正証書正本を保管していた執行吏重村直晴よりこれが引渡を受け、同年四月頃、前記売豆紀執行吏に、更に、同年五月頃、前記北川執行吏に、それぞれ強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押の手続に立会い、
以てその都度法律事務の取扱を為し、
第六、被告人等四名は、いずれも弁護士でないのに拘らず、報酬を得る目的を以て、共謀の上、
一、昭和三二年五月頃、出雲市今市町紙類卸販売業飯塚浩一方において、同人より同人の浜田市朝日町居住の印刷業古谷守雄に対する紙類売掛代金等の債権金七万四、八四二円の取立方依頼を受けるや、同年六月頃、浜田簡易裁判所に対し支払命令申立の手続を為し、同年一二月六日頃、前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押、競売の手続に立会い、
二、昭和三〇年九月頃、仁多郡仁多町大字亀嵩居住の農業土屋昌義より、同人の大原郡木次町大字寺領居住の家畜商佐藤恒吉に対する牛売却代金等の債権金五万円の取立方依頼を受けるや、翌三一年二月頃、恰も右土屋より該債権を譲受けたかの如く装い、関係書類を作成した上、その旨債務者たる右佐藤に通知し、被告人岡田博を債権者、右佐藤を債務者とする公正証書作成の手続をなした上、同三三年三月、執行文の附与を受け、翌四月前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押、競売の手続に立会い、
三、昭和三二年三月頃、簸川郡大社町大字杵築北蒲鉾製造業中富定義方において、同人より同人の飯石郡三刀屋町居住の古物商対間与三郎に対する桐材売掛代金等の債権金二万四、五〇〇円の取立方依頼を受けるや、出雲簡易裁判所に対し支払命令申立の手続を為し、翌三三年五月頃、前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、その執行に立会い、
以てその都度法律事務の取扱を為し、
第七、被告人岡田博及び同金築重久は、いずれも弁護士でないのに拘らず、報酬を得る目的を以て、共謀の上、
一、昭和三三年七月初頃、出雲市塩冶町なる被告人金築重久の肩書居宅において、平田市東郷町居住の前記西尾定蔵より同人の同市奥宇賀町居住の旅館業小林久吉に対する貸付金等の債権金三七万五、〇〇〇円の取立方依頼を受けるや、その頃、出雲簡易裁所判に対し仮差押申立の手続をなし、前記北川執行吏に仮差押に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、その執行に立会い、且、債務者たる右小林と和解を為し、
二、同年五月二四日頃、出雲市知井宮町衣類販売業安井隆三方において、同人より同人の簸川郡佐田村居住の農業常松末男に対する衣類売掛代金等の債権金三、五六〇円の取立方依頼を受けるや、同年八月頃、出雲簡易裁判所に対し支払命令申立の手続を為し、執行文の附与を受けた上、前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任し、次で弁済金を受領し、
三、同年八月初頃、出雲市知井宮町なる前記安井隆三方において、同人より同人の簸川郡佐田村大字佐津目居住の農業手伝元山照に対する衣類販売代金等の債権金九五〇円の取立方依頼を受けるや、その頃、出雲簡易裁判所に対して支払命令申立の手続を為し、執行文の附与を受けた上、前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押の手続に立会い、且、弁済金を受領し、
四、同年七月頃、出雲市今市町農業兼鶏肉店樋野国市方において、同人より同人の簸川郡斐川村大字直江町居住の農業兼日雇人夫茶谷精吉に対する貸付金等の債権金一万六、五〇〇円の取立方依頼を受けるや、同年九月頃、出雲簡易裁判所に対し支払命令申立の手続を為し、執行文の附与を受け、以て強制執行を委任するにつき必要な関係書類を整え、
五、同年春頃、平田市園町物品販売業勝田政善方において、同人より同人の同市唐川町居住の製材業荒木礼次郎に対する材木売掛代金等の債権金八、二七〇円の取立方依頼を受けるや、同年一〇月頃、出雲簡易裁判所に対し、支払命令申立の手続を為し、執行文の附与を受け、以て、強制執行を委任するにつき必要な書類を整え、
以て、その都度法律事務の取扱を為し、
第八、被告人岡田博、同岡田宏之及び同金築重久は、いずれも弁護士でないのに拘らず、報酬を得る目的を以て、共謀の上、
一、昭和三二年八月一日頃、簸川郡大社町大字修理免精麦業杉原類次郎方において、同人より同人の同郡同町大字杵築東居住の文房具商川上末三郎に対する頼母子講債権等金五万四、七〇〇円の取立方依頼を受けるや、翌三三年七月頃、出雲簡易裁判所に対し支払命令申立の手続を為し、執行文の附与を受けた上、その頃、前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押の手続に立会い、且、債務者たる右川上と示談の上、弁済金の一部を受領し、
二、昭和三三年七月頃、出雲市今市町なる被告人岡田博の当時の居宅において、同市同町居住の印刷業宇田友次郎より同人の同市塩冶町居住の原邦吉に対する印刷物代金等の債権金一七万九、〇〇〇円の取立方依頼を受けるや、右宇田より執行力ある和解調書の正本及び印鑑を借受け、同年七月七日頃、前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて強制執行の委任をすると共に、差押、競売の手続に立会い、且、弁済金を受領し、
三、同年夏頃、出雲市今市町において、同市朝山町居住の土木請負業吉田幸助より同人の松江市雑賀町居住の神具商楽阿弥幸治、楽阿弥新一両名に対する貸付金等の債権金一二万円の取立方依頼を受けるや、同年八月頃、松江簡易裁判所に対し、支払命令申立の手続を為し、執行文の附与を受けた上、同年一〇月頃、前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押の手続に立会い、且弁済金を受領し、
四、同年一〇月頃、出雲市今市町常松由太郎方において、同人より同人の簸川郡大社町大字遙堪居住の飼料商柿田健治に対する貸付金等の債権金五三万四、〇〇〇円の取立方依頼を受けるや、同人より執行力ある判決正本を借受け、同年一〇月二三日頃、前記北川執行吏に強制執行に必要な関係書類を添えて有体動産の強制執行を委任すると共に、差押の手続に立会い、
以てその都度法律事務の取扱を為し
たものである。
(証拠)略
(法令の適用)
法律に照らすに、先ず被告人等の判示各所為に対する罰条を表示すれば、次の通りである。
被告人岡田博関係
判示第一の各所為につき、
第一の一の(一)、(二)及び(四)の各点 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
第一の一の(三)の点 弁護士法第七二条、第七七条。
第一の二の点 弁護士法第七三条、第七七条。
第一の三の点 刑法第二〇八条、罰金等臨時措置法第二条、第三条第一項第一号。
第一の四の点 刑法第二〇四条、罰金等臨時措置法第二条、第三条第一項第一号。
第一の五の点 刑法第一九八条、第一九七条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第一号、刑法第六〇条。
第一の六の(一)及び(二)の各点 刑法第一九八条、第一九七条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第一号。
第一の七の点 銃砲刀剣類等所持取締法第七条第二項、第三五条第一号。
第一の八の点 銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項、第三一条第一号。
判示第五の各所為につき、
第五の一乃至四の各点 刑法第二四九条第一項、第六〇条。
第五の五の(一)及び(二)の各点 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項、刑法第二二二条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第二号及び刑法第二三〇条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第一号、刑法第六〇条。
第五の五の(三)の点 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項、刑法第二二二条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第二号。
第五の六の(一)乃至(一〇)の各点 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
判示第六の一乃至三の各所為 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
判示第七の一乃至五の各所為 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
判示第八の一乃至四の各所為 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
被告人岡田宏之関係
判示第二の各所為につき、
第二の一の点 刑法第二〇四条、罰金等臨時措置法第二条、第三条第一項第一号。
第二の二の(一)乃至(三)の各点 弁護士法第七二条、第七七条。
判示第五の各所為につき、
第五の一乃至四の各点 刑法第二四九条第一項、第六〇条。
第五の五の(一)及び(二)の各点 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項、刑法第二二二条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第二号及び刑法第二三〇条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第一号、刑法第六〇条。
第五の五の(三)の点 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項、刑法第二二二条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第二号。
第五の六の(一)乃至(一〇)の各点 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
判示第六の一乃至三の各所為 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
判示第八の一乃至四の各所為 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
被告人渡部保雄関係
判示第三の所為 弁護士法第七二条、第七七条。
判示第五の各所為につき、
第五の一乃至四の各点 刑法第二四九条第一項、第六〇条。
第五の五の(一)及び(二)の各点 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項、刑法第二二二条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第二号及び刑法第二三〇条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第一号、刑法第六〇条。
第五の五の(三)の点 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項、刑法第二二二条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第二号。
第五の六の(一)乃至(一〇)の各点 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
判示第六の一乃至三の各所為 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
被告人金築重久関係
判示第四の一乃至三の各所為 弁護士法第七二条、第七七条。
判示第六の一乃至三の各所為 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
判示第七の一乃至五の各所為 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
判示第八の一乃至四の各所為 弁護士法第七二条、第七七条、刑法第六〇条。
先ず、右のうち、被告人岡田博、同岡田宏之及び同渡部保雄の判示第五の五の(一)及び(二)の各点は、一箇の行為にして数個の罪名に触れる場合に該当するから、刑法第五四条第一項前段、第一〇条により、いずれも重い名誉毀損の罪の刑を以て処断すべく、次に、被告人等四名の弁護士法違反、被告人岡田博、同岡田宏之及び同渡部保雄の名誉毀損及び暴力行為等処罰に関する法律違反、被告人岡田博及び同岡田宏之の傷害並びに被告人岡田博の暴行、贈賄及び判示第一の八の銃砲刀剣類等所持取締法違反の各罪につき、いずれも所定刑中懲役刑を選択する。而して、被告人等四名の各罪は、それぞれ同法第四五条前段併合罪の関係にあるから、岡田博の判示第一の七の銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪を除き、同法第四七条、第一〇条に則り、岡田博、岡田宏之及び渡部保雄の三名については、最も重いと認めるべき判示第五の四の恐喝の罪の刑に、金築重久については犯情の最も重いと認めるべき判示第七の一の弁護士法違反の罪の刑に、それぞれ法定の加重をなし、その刑期範囲内において、被告人岡田博、同岡田宏之及び同渡部保雄の三名をいずれも懲役二年六月に、被告人金築重久を懲役一〇月に、各処し、なお、被告人岡田博については、判示第一の七の銃砲刀剣類等所持取締法違反の罪の所定罰金額範囲内において、同被告人を罰金一、〇〇〇円に処し、同被告人に対する懲役刑と罰金刑は、刑法第四八条第一項本文によつて、これを併科し、右罰金を完納することができないときは、同法第一八条に則り、金二〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置すべく、次に、被告人金築重久に対しては、同法第二五条第一項を適用し、情状により、本裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予すべきものとする。又、押収に係る物件のうち、金封三枚(証第九、第一一及び第一二号)は、いずれも本件犯罪行為によつて得た物であり、猟銃一挺(証第一三号)及び日本刀一振(証第一四号)は、いずれも本件犯罪行為を組成した物であつて、且、犯人以外の者に属しないから、刑法第一九条第一項第一号及び第三号、第二項によつて、それぞれ所有者たる被告人からこれを没収すべく、訴訟費用については、刑事訴訟法第一八一条第一項本文、第一八二条を適用し、被告人岡田博、同岡田宏之及び同渡部保雄三名に対し、全部連帯して負担させることとする。
よつて、主文の通り判決する。
(裁判官 組原政男 西村哲夫 武波保夫)